ソウルを皮切りに始まった BVLGARI STUDIO なるもの
共同創造と実験の舞台であるブルガリ スタジオって、いったい?
1884年、ギリシャの銀細工職人であったソリティオ・ブルガリ(Sotirio Bvlgari)がローマ渡り、創業した〈BVLGARI(ブルガリ)〉。いまや誰しもが知るイタリアの最高峰ジュエラーだが、140周年を迎えたこの記念すべき年に、「BVLGARI STUDIO(ブルガリ スタジオ)」なるものを始動。プレスリリースを読むと、この「BVLGARI STUDIO」というのは、“共同創造と実験の舞台で、先駆的なビジョンを共有し、新たな地平を切り開くプラットフォーム”と記されている……。単に新作のジュエリーでもなく、イベント名でもない、この難解なプラットフォームを理解するべく、まずは、〈BVLGARI〉のVice Presidentであるローラ・ブルデーゼ(Laura Burdese)に直撃した。
Hypebeast:BVLGARI STUDIOの背景にある考え方ってなんなんでしょう?
BVLGARI STUDIOについて構想を練り始めたとき、まず、我々が“Italian Genius(イタリアの天才)”と呼んでいるものを、これからどう拡大していくかについて考えました。Italian Geniusという概念はルネサンス期や、あるいはもっと前からイタリアのカルチャーや環境に根付いているのです。ブルガリはこのItalian Geniusを象徴しているブランドと言えます。そして、それと同時に全く新しいスタイルを見出しながら、Italian Geniusを再解釈してきたブランドでもあるのです。たとえば、ジュエリーといえばダイヤモンドや金で作られたものがほとんどだった1880年代に、ブルガリは多様な色石を組み合わせたりして、世界的にも新しい”地中海スタイル”のジュエリーを作り出したことがあります。
1990年代に登場した「B.zero1」や、「BVLGARI BVLGARI」のコレクションも、工業的なデザインをラグジュアリーなジュエリーに落とし込んだ、それまでになかった新しい発明でしたよね。これも、Italian Geniusにまた新たな命が宿った瞬間でありました。
そういうブルガリの革新の歴史があるなかで、これからItalian Geniusをさらに発展させて、どうやって「B.zero1」などのアイコンを盛り上げていこうかと考えた時、(単なるプロダクトの新作ではない)BVLGARI STUDIOを始めようと考えました。BVLGARI STUDIOは、ある種コミュニティで、一緒に創作&デザインできるコミュニケーションプラットフォームとなります。
一緒に創作&デザインとは? BVLGARI STUDIOはこれからどうなっていくのでしょうか?
世界中のコミュニティ、デジタルクリエイターや建築家、ミュージシャンなどのさまざまなアーティストとコラボレートしていきますよ。新しいアイデアや実験、プロジェクトに新風を吹き込みながら。このBVLGARI STUDIOは多種多様なアーティストが互いにインスパイアしあって、ブルガリからインスピレーションを受けて、新しいアートの形を作り出していくことを望んでいます。(必ずしもブルガリからインスピレーションを受けて欲しいわけではないですが、)これはいわば、異家受粉(cross-pollination)のプラットフォームと言えますね。
なるほど。とても壮大で、まさにNew Italian Geniusだと思います。そして、その第一弾の発表の場所が、韓国ソウルだったのですね。
はい。我々はItalian Geniusに再び命を宿そうとしています。初の発表がここソウルで行われますが、このアヴァンギャルドな魂を表現するのにはうってつけの都市だと考えました。若者カルチャーに活気があり、エネルギーがみなぎる都市であり、訪れるたびに素晴らしいと感じています。だからソウルがBVLGARI STUDIOの初開催地にピッタリだと思ったのです。ですがソウルだけには留まらず、世界中でBVLGARI STUDIOを展開していく予定なので楽しみにしていてくださいね。
──と、ローラは忙しい合間を縫って、『Hypebeast』の取材に応じてくれた。このインタビューが行われた3月14日の夜、ソウルにて、世界中から40人のセレブリティと700人の招待客を招き、初めて「BVLGARI STUDIO」を実体化したイベントが行われた。40人のセレブリティは、ブルガリ・アンバサダーであるBLACK PINKリサはもちろん、日本から山下智久や森星も含まれる。これら世界に名だたるスターが目にしたのは、クラシックとは真逆に思える、最高に新しい3組のパフォーマンスだ。
その3組のコラボレート・アーティストとは?
「BVLGARI STUDIO」の初回コラボレーション・アーティストは、ドイツ在住のイタリア系フィリピン人デジタルアーティストのアントニ・トゥディスコ(Antoni Tudisco)と、フランスの振付師のサデック・ベラバ(Sadeck Berrabah)と、イタリアのマルチアーティストであるアニマ(ANYMA)の3組だ。
まず、アントニ・トゥディスコは、「BVLGARI STUDIO」理念にインスパイアされたティザー映像を3月1日に公開している。そして「B.zero1」にインスパイアされた作品を「BVLGARI STUDIO」の展示スペースで発表した。見慣れたはずの「B.zero1」が違ってみえ、ふむふむ、確かに新しい息吹が宿っているように思える。このトゥディスコは、〈BVLGARI〉にインスパイアされたアートを引き続き発表していくという。
BVLGARI STUDIOの展示スペースを抜けると、ダンスホールと舞台の空間があり、ここではまずサデック・ベラバによるパフォーマンスが披露された。それは、100人ものダンサーが同じ振り付けで同時に動くという圧巻の演技。個々の単一性が大切になるという哲学的なコンセプトに基づいて振り付けされており、これはダイバーシティやインクルージョンなどが感じ取れる振り付けといっても大袈裟ではない。それぞれの個人がハーモニーを奏でながら、一つの大きな絵のようにも捉えられた。多くの”個人”が単一なものとなりダンスする姿は、かくも美しいのか。
次にプレイしたアニマ(ANYMA)にも圧倒された。音楽と映像によるデジタルアートを繋ぎ合わせたスタイルで、人型のロボットが大きな大きな3Dモニターに映し出され、そのロボットが感情的に動く様は没入感の極み! これらが、「BVLGARI STUDIO」や「B.zero1」のフィロソフィーにインスパイアされたと思うのとワクワクするが、いっぽうで、〈BVLGARI〉側も彼らからインスパイアされていくと思うと、今後どんなジュエリーが発表されていくのか、と、それはそれでワクワクする。
ソウルを皮切りに始まった「BVLGARI STUDIO」。今年は、ほか数都市で開催予定とのことだ。それは、ヨーロッパなのかアメリカなのか、はたまたアジアなのか、まだわからないが、この「BVLGARI STUDIO」は、コンセプチュアルで異家受粉的なプラットフォーム。ゆえに、次の開催地では、まったく違ったカタチで披露されるかもしれない。前衛的な芸術の探究をしたいなら、「BVLGARI STUDIO」は見逃せない。
>>>山下智久が見た「BVLGARI STUDIO」