独創的なアイディアで新感覚の作品を生み出す KOTA KAWAI | On The Rise

古着と椅子で生み出すアート作品を作りつつ、著名ブランドとのコラボレーションや、共同創業者としてフリマサービス『pickyou』を運営する彼のルーツに迫る

アート 
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次世代を担うデザイナーやアーティスト、ミュージシャンといった若きクリエイターたちにスポットライトを当てる連載企画 “On The Rise”。第13回目となる今回は、古着と椅子で生み出したアート作品を次々と発表し、注目を集める若手アーティスト KOTA KAWAIにフォーカスする。

1998年生まれのKOTA KAWAIは、文化服装学院在学中より東京・原宿の『THE ELEPHANT』にてカスタムリメイクの洋服を製作。2020年に同校を卒業した後、アーティストとしての活動を開始した。まず初めに彼が発表したのは、古着の残布を使って椅子をリメイクしたアート作品。作ったものを自身の『Instagram(インスタグラム)』に投稿したところ、ファッションと椅子、そして環境問題を組み合わせた独創的なアート作品が多くの人の目に留まり、同年11月には初の個展を開催した。

その個展を皮切りに、〈DAIRIKU(ダイリク)〉や〈FACETASM(ファセッタズム)〉〈TATRAS(タトラス)〉などのファッションブランドをはじめ、イタリア発の家具ブランド「Arflex(アルフレックス)」、現代アーティスト 空山基、スポーツブランドの〈ASICS(アシックス)〉まで、さまざまなジャンルのコラボレーターと協業してきた。最近では、『THE CAP』と〈New Era®︎(ニューエラ)〉による“The Vintage Collection”へのアートピースの提供や、東京を拠点に活動する若手匿名クリエイター集団が手掛ける〈PERVERZE(パーバーズ)〉とのチームアップなど、ストリートシーンとの関わりも深い。

本稿では、彼のアーティスト経歴から、話題となったコラボレーションのきっかけ、共同創業者として運営するフリマサービス『pickyou(ピックユー)』についてやこれからの展望まで、そのマルチな才能を持つ彼にインタビューを敢行した。


Hypebeast:まず、アーティストとして活動し始めたきっかけがありましたら教えてください。

KOTAKAWI:僕、文化服装学院を卒業していて。在学中に、2018年のオープン当初からTHE ELEPHANTというショップで服のリメイクラインを担当していたんです。ですが、卒業してもそのままTHE ELEPHANTでカスタムだけを続けていくというよりは、独立することを考えていました。そうしたなかで、ブランドを始めることも考えていたのですが、リメイクの即興性があるところや、自由さに面白さを感じていて。加えて、当時ちょうど椅子が作りたいという思いもあり、服で椅子の彫刻を作ればいいのではないかと思いつきました。その後すぐに、THE ELEPHANTのカスタムで処分していた残布を使って椅子を作ったことがきっかけですね。そういった作品をしばらく自分のInstagramに投稿した後、個展を開いて……という形で自然とアーティストとして活動していくようになりました。

作品を作る際のインスピレーション源はありますか?

インスピレーション源はよく聞かれるのですが、あまりなくて。インスピレーションというのは、本当にありきたりな、日常的なものからだと思っていて。というのも、僕がアーティスト活動をするうえで大きくテーマとしている“視点”と、そのなかにある“消費”や“生産”は、日常に溢れているものなんですよね。そういったテーマに対して、日常のなかで生まれた疑問をインスピレーションとして、作品にしていくようなイメージです。

“視点”それから“消費”や“生産”といったテーマについて、詳しく教えていただきたいです。

僕が椅子を作り始めたきっかけは、服で作られた椅子の彫刻に、新たな“視点”が生み出せるのではないかと、ワクワクしたからです。昔から、椅子は権威の象徴だといわれていますよね。そういうものが、人類が大量に作った服で覆われてしまっている。これは、服が消費する以上に生産されてしまっているという、危機的状況を表していて。この問題に今までにない方法でアプローチしていくために、古着と椅子を組み合わせた作品を発表することにしました。あとは、視点。見る角度によって、物事は変わるということですね。例えば、この魚の作品(上記1枚目参照)は、元々既製品のモーターが入っていて、パターンを取って、自分の思う布をまとわせて、形作る。そうすると、本当はもう使わないはずだったものや、限られた用途でしか使われなかったものが、作品となって意味を持ち始めますよね。これが、1つのものに対して、何通りもの考えを持つという視点です。そういったテーマを通して、1つの作品を作り上げています。

なるほど。次に、アーティストとして活動し始めてからのお話しをお聞きしたく。まずは、TATRASさんとのコラボレーションについてきっかけを教えてください。

TATRASは、仲が良いアーティストのCOIN PARKING DELIVERYくんが、僕がコラボをした少し前にTATRASとコラボしていて。その際に、コラボレーションするアーティストとして僕を推してくれて。そこからオファーがあって、実現しました。

DAIRIKUさんとのコラボレーションなども、元々デザイナーの岡本大陸さんと仲が良かったのでしょうか?

大陸くんは、初めて椅子の彫刻を展示をした際に、椅子がとても好きとだということもあり、誰かのストーリーを見て遊びにきてくださったんです。そこで、作品も買ってくださって、飲みに行こうよと言ってくれて。その際から仲良くさせていただいていて、一緒に何かやろうということになりました。その繋がりで、今は臨時休業している大阪のCONTENASTOREで行われたポップアップのために、DAIRIKUの服を使ってまず1脚作りました。その後、僕が2Gと空山基さんとの椅子の彫刻を作ったことがきっかけで、他にも2Gさんと何かやろうとなっていて。タイミングよく、DAIRIKUさんが2GとのコラボレーションでTシャツを作ってポップアップを開催するということで、椅子の彫刻を作らないかとお声がけいただき、2度目のコラボレーションが実現しました。

asicsとのコラボレーションでは、なぜバイクを作ったのですか?

asicsは、グローバルキャンペーンの撮影だったのですが、最初は椅子を作れないかというお話で。その際、スケジュール的に椅子を作るのが難しいこともあり、僕は代案として魚を提案したのですが、写真なので大きくて迫力があるものを見せたいということになりました。そこで色々と考えていた際に、乗れなくなった自転車があることを思い出して。それを使って、asicsの生地を加えつつ、よりダイナミックな動きや、スポーツ的な要素を表現することにしました。

先ほどのお話であった魚の作品、The North Faceの“アイディアの座礁”についてお伺いしたいです。

“アイディアの座礁”は、これまでに作ったブランド名が出ているものの中でも、唯一非公式の作品です。本当は、作った後にThe North Faceに持ち込みをしようと思っていました。ですが、作っているうちに、すぐに発表したくなってしまって。これまでは、作品を作るうえで基本的にブランドロゴを使わないようにしていました。パッチワークで作るときも、全てロゴだけ外します。しかし、この作品に関しては、ロゴありきだと思っていて。アウトドアや機能的なアパレルのブランドロゴを見えるようにすることは、この作品では重要なことだと感じたんです。なので、The North Faceのアパレルやロゴを大量に集めて、動く魚を作りました。

モチーフに魚を選んだ理由はありますか?

これまでのお仕事は、椅子の彫刻を制作する機会が多かったんです。そんな中で、今作っている椅子の彫刻を(Instagramに)アップして、それを見てくれている人がいる。そこに変化を加えることは、難しいことだと思うんです。ただ、今後アーティストとしてバリエーションを増やしていくためにも、今までのイメージを一新するアクションが必要だと考えて。なので、この魚の作品には、僕のこれまでの活動とは違うものを作る、動きを一歩踏み出すという意味を込めました。これ、中に入っているおもちゃのスイッチを入れたら動くんです。

なぜ動かそうと思ったんでしょうか?

それこそ、“一歩踏み出す”という意味もありますよね。この作品のタイトルでもある座礁は、魚が流れ着いて、海辺で跳ねていることで。座礁した魚は、干からびて死んでしまうことがほとんどですが、まれに跳ねて海に戻れる魚もいるんです。なので、魚にとって、動くことは体力も使うのでリスクであり、そのまま力尽きてしまう可能性もあるけれど、逆に海に戻れる可能性も秘めていますよね。つまり、跳ねる(アクションを起こす)ことで次のステップにいける可能性があります。そういった意味を込めて、動かすことにしました。

では、これは個人的なアートワークということなんですね。

そうですね。最初の展示以降、ほとんどの作品をコラボレーションでしか作っていなかったんです。ですが、コラボ作品となると、相手側の意向も込められていて。なので、そういうものは全て無くして、個人の表現として作ったものです。

いっぽうで、ブランドさんとのコラボレーションなどで作品を作る際に意識していることがあれば教えてください。

コラボレーションのお話をいただくのは、椅子の彫刻をベースにしたものが多くて。なので、1つ1つのテーマは変えるようにしていますね。これも先ほどお話しした、“視点”を変えるということと同じで。同じ椅子で作ってはいるけれど、僕の中で意味合いが違うことがあります。

これまでKAWAIさんのイメージには、椅子というモチーフが大きくあったと思います。そんな中で、先ほどの魚もしかり、最近は椅子ではない作品も挑戦しているように感じていて。これからは、椅子ではない作品に切り替えていくことも考えているのでしょうか?

切り替えることはないと思います。椅子の彫刻は、僕のアイコンになっていると思いますし、椅子の作品が好きなので。ただ、僕は1つのものに絞るということが好きではないんです。海外のアーティストは、代表的な作品がいくつかありつつも、他のジャンルにもいくつかあって……という、多岐にわたって得意なジャンルがあるけれど、自分の中のテーマはその全てに一貫してある人がほとんどです。例えば、時間をテーマにしているアーティストは、時間経過を体験できるインスタレーションや彫刻、絵画などを、違った形態の作品でアプローチしていくんです。僕は、そういった色々な角度から1つのテーマに沿ってさまざまなアプローチをしていく表現方法が好きで。なので、椅子を辞めるのではなく、椅子も含めたさまざまな作品を展開するなかで、マテリアルに捉われず、一貫して表現したいことに注力するというイメージですね。

ここで一度、共同経営者となっているpickyouについてお聞きしたく。このサービスは、KAWAIさんが立ち上げたものなのでしょうか?

pickyouは、仲の良かった高校の同級生と2人で立ち上げました。確か、3年前くらいですかね。今一緒にpickyouをやっている友人が、もととなるフリマサイトを企画していたんです。ですが、1人ではなかなか難しいという話も聞く中で、一緒にやることでお互いの得意なことを活かせれば上手くいきそうだなと思って。そこから、彼がこれまで企画してきたものをベースに資料を作って、意見を出し合って一緒に始めました。pickyouの構想は、僕の活動のテーマとも重なっている部分もあって。そもそも、イメージとしてですが、僕はフリマをあまりクールなものだと思っていなくて。なので、そういうイメージを変えられるのではないかと思ったことも決めた理由の1つです。後は、作品を発表することに限らず新しいことをするのはもちろん好きですし、より自分ができることを活かせるのではないかと思ったので。日本にこれまでなかったような、フリマのようだけどフリマではなく、ファッション性のあるサービスが作れるのではないかということで始めました。

KAWAIさんは、pickyouでどんな役割を担ってらっしゃるんでしょうか?

僕は、クリエイティブ面とSNS運用全般を担当しています。具体的には、pickyouのイメージ構築や企画、イベント関係、チームアップする相手の決定などです。会社のオペレーションは、一緒に始めた友人がほとんどやってくれています。彼と2人で、お互いがお互いの不足部分を補って運営しているというイメージです。

現在pickyouは紹介性ですが、これからも同じように近しいコミュニティを広げていくようなイメージでしょうか?

今後は、誰でも使えるように展開しようと考えています。今ある販売するものに対しての制限も、あまり儲けたくないなと思っていて。ただ、ひとまずはよりスムーズに一般化することを実現するためにも、トライ&エラーを重ねて、より身近で快適なサービスになるように運用していければと思います。

最後に、これからの展望があれば教えてください。

これは活動を通して思ったことですが、先ほどお話した環境問題のようなシビアな問題は、“危機感”では行動できないと思っていて。危機感というのは、簡単にいうと、宿題のように明日提出しなければならないという課題でも、目の前にくるギリギリまで動けないというようなときに感じることです。ですが、僕は危機感よりも、もっと“期待感”を認識してもらうべきだと思っていて。新しい移り変わりのような、自分の生活が変わるかもしれないという、ポジティブなイメージが湧くものに対しては、人はアクティブになれるんです。こうなったら嫌だとか、こうならないようにしたいと思うマイナスな感情に対しては、本当に目の前に立たされないと分からない。なので、ざっくりとにはなってしまうのですが、作品もpickyouも、もっとポジティブな感情が動くような期待感のあるものを作っていきたいと思っています。

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テキスト
フォトグラファー
Kazuki Takamori / Hypebeast
インタビュアー
Rina Sugo
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