KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024で見るべきこの1枚
桜舞い散る4月13日から5月12日まで。国内外の写真家による展示が京都市内の12カ所でみられる
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭とは?
「写真」はまだまだ評価されていない。そこに着目し、「写真」の可能性を見据えるべく立ち上げられた国際的フェスティバル。舞台は、世界屈指の文化都市・京都がもっとも美しい春。古都ならではの歴史的建築内で「写真」を眺める。いっぽうで、モダンな近代建築のなかで「写真」を眺める。ときに、伝統工芸職人や最先端テクノロジーとコラボレーションしながら──。そんな「写真」に特化した芸術祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が2024年もやってきた。2013年にスタートして、第12回目となる今年のテーマは、“SOURCE”。
テーマである“SOURCE”について
源は初めであり、始まりであり、すべてのものの起源である。 それは生命の創造であり、衝突が起きたり自由を手に入れたりする場所であり、 何かが発見され、生み出され、創造される空間である。 人生の分岐点にかかわらず、私たちは岐路に立っており、原点に戻るか、 新しいことを始めるかの間で揺れ動いている。 生命、愛、痛みのシンフォニーが響き渡るのは、この神聖な空間からなのだ。 その源で、無数の機会が手招きし、何か深い新しいものを約束してくれる。 2024年、KYOTOGRAPHIEは12の会場で13の展覧会を展開し、 SOURCEを探求し、オルタナティブな未来を望む。
この“SOURCE”をテーマに、国内外のアーティストによる13展示が京都市内の12カ所でみられる。ここでは事前予習とばかりに、その参加アーティスト全員の写真を1枚づつティザー的にピックアップした。
Birdhead(鳥頭)
「Welcome to Birdhead World Again, Kyoto 2024」
上海出身の宋涛(ソン・タオ/1979年生)と季炜煜(ジ・ウェイユィ/1980年生)が2004年に結成した写真家ユニット。20年間に渡って、激動していく上海の街にカメラを向け、ノンフィクションで撮り続けていた。近年は、伝統的な写真技法を用いて、写真の源(つまりSOURCE)を探す実験的な表現も見られる。この写真は、おそらくその昔の写真技法で撮影されたものだろう。
Presented by CHANEL NEXUS HALL
会場|誉田屋源兵衛 竹院の間、黒蔵
ジェームス・モリソン(James Mollison)
「子どもたちの眠る場所」
ケニア生まれ、イギリス育ち。現在はイタリアのヴェネツィア在住。KYOTOGRAPHIE 2024で発表するのは、世界中の子どもたちとその寝室をテーマにした現在進行中のプロジェクト。さまざまな境遇に置かれる子どもたちの寝室を見ることが、現代社会が抱える問題について考えるきっかけとなるのでは。
Supported by Fujifilm
会場|京都芸術センター
クラウディア・アンドゥハル(Claudia Andujar)
「ヤノマミ ダビ・コペナワとヤノマミ族のアーティスト」
ブラジルのアマゾンに住む最大の先住民グループのひとつであるヤノマミに雑誌の仕事で出会い、以降、50年に渡って、ヤノマミ族の権利と主権を守るために活動を続けているアーティストの展示。この写真は、赤外線フィルムで撮影しながら、ヤノマミ族の子どもの入浴を捉えている。
In collaboration with Instituto Moreira Salles and Hutukara Yanomami Association
会場|京都文化博物館 別館
ルシアン・クレルグ(Lucien Clergue)「ジプシー・テンポ」
フィンセント・ファン・ゴッホが傑作をいくつも生み出した、フランス・アルル出身。クレルグは2014年に他界したが、その芸術活動の根底には、アルルという街の存在が大きいという。そのアルルにある湿地帯カマルグで撮影された写真シリーズは、不思議な構図が多く、そして叙情的である。
Supported by Cheerio
会場|嶋臺(しまだい)ギャラリー
ティエリー・アルドゥアン(Thierry Ardouin)
「種子は語る」
前衛的な写真家集団Tendance Floueの共同設立者でもあるフランスの写真家ティエリー・アルドゥアンは、人間とその環境とのつながりをテーマに活動。彼がフォーカスするのは“種”だ。ポートレートとして“種”を撮影し、文化や時代を超えた種子の存在に解明を通じて、この「Seed Stories」は多様性への挑戦を探求しているという。
Presented by Van Cleef & Arpels
In collaboration with Atelier EXB
会場|二条城 二の丸御殿 台所・御清所
ヴィヴィアン・サッセン(Viviane Sassen)
「PHOSPHOR|発光体:アート&ファッション 1990–2023」
オランダのアーネム王立芸術アカデミーでファッションデザインを学び、現在はファッションフォトグラファーとして活動するサッセン。絵画的でありつつも、服を綺麗に見せる美的感性があり、あまたのファッションメゾンの撮影を請け負っている。ピックした1枚はコラージュのような1枚だが果たして?
Presented by DIOR
In collaboration with the MEP
––Maison Européenne de la Photographie, Paris
会場|京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡)
併設: DIOR の支援による若手作家の写真/
視覚芸術賞の展示「 The Art of Color」
柏田テツヲ
「空(くう)をたぐる」
インドへの旅に向けて一眼レフを買い、そこで写真の魅力にハマり、フォトグラファーとなった柏田。このKYOTOGRAPHIE 2024では、昨年訪れたフランス旅で撮った写真をメインに、環境問題や歴史、自身が滞在した証などを織り交ぜながら作品を発表する。蜘蛛の巣のように編まれた赤い糸は、受け手側の想像力を試しているよう。
Ruinart Japan Award 2023 Winner
Presented by Ruinart
会場|両足院
イランの市民と写真家たち(Iranian citizen and photographers)
「あなたは死なない──もうひとつのイラン蜂起の物語──」
この(動画から切り出した)写真の撮影者は匿名。ときは2022年10月26日。場所は、東クルディスタン、サッケズ。ヒジャブのつけ方で道徳警察に拘束され死亡した、マフサ・アミニの死後40日を追悼するため、何千人もの人々がアイチ墓地へ向かう中、ヒジャブをかぶらない少女が車の上に立つ。名もなき作家が、イランの民衆に勇気を捧げる。
In collaboration with Le Monde
会場|Sfera
ジャイシング・ナゲシュワラン(Jaisingh Nageswaran)
「I Feel Like a Fish」
インドのタミル・ナードゥ州ヴァディパッティ村出身。独学で写真を学んだナゲシュワランは、労働者階級で育ったという生い立ちを乗り越えるように祖母から教育を受ける。社会から疎外されたコミュニティの生活を写し取ることに重点を置き、ジェンダー・アイデンティティやカースト差別、農村の問題をテーマとした作品を発表している。ピックしたこの1枚は、添えた手が、たくさんの愛情を物語る。
KG+SELECT Award 2023 Winner
会場|TIME’S
川田喜久治「見えない地図」
御年91歳。いまなお現役。日々、川田のインスタグラムの写真は更新されている。1965年に発表された「地図」は、敗戦という歴史の記憶を記号化するメタファーに満ちていた。以来、現在に至るまで、常に予兆に満ちた硬質で新しいイメージを表現している。
Supported by SIGMA
会場|京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
川内倫子
「Cui Cui + as it is」
2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2023年にソニーワールドフォトグラフィーアワードのOutstanding Contribution to Photography(特別功労賞)を受賞。国内外で評価される川内倫子は今回、同じ会場で展示される潮田登久子との対話的な展覧会を行う。ピュアな子どものピュアな動きは、対話でどのような印象に変わるのだろうか。
Supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
会場|京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
潮田登久子
「冷蔵庫/ICE BOX+マイハズバンド」
潮田の代表作といえば、家庭の冷蔵庫を撮影した『冷蔵庫/ICE BOX』。そして、2022年、Paris Photo–Aperture PhotoBook Awardsの審査員特別賞受賞を受賞した写真集『マイハズバンド』。それらの写真シリーズが、川内倫子の写真と対話するように展示されている。このモノクロの、子どもが破けた布から足を出す写真は、時代を超えてどう対話するのだろう。
Supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
会場|京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
ヨリヤス(ヤシン・アラウイ・イスマイリ)(Yoriyas(Yassine Alaoui Ismaili))
「カサブランカは映画じゃない」
モロッコ出身のヤシン・アラウイ・イスマイリ(アーティスト名:ヨリヤス)は、プロのブレイクダンサーとして世界を転線していたが、膝の大怪我によりダンサーのキャリアを断念。2015年より、新たな自己表現の手段として写真家の活動を開始。モロッコ、とくに自身が住んでいるカサブランカやアフリカの日常生活を撮影し、その地での様々な社会的変化について提示する。そのあまりにもありのままの現実を捉えた作品は、構図バランスも優れている。また2023年に京都に滞在し制作をした作品を出町桝形商店街とKYOTOGRAPHIEのパーマネントスペースDELTAでも作品が展示される。
Supported by agnès b.
会場| ASPHODEL
「KIF KIF KYOTO」
KYOTOGRAPHIE African Residency Program
会場| DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent
Space、出町桝形商店街
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024
https://www.kyotographie.jp
会期 2024年4月13日(土)-5月12日(日)
主催 一般社団法人KYOTOGRAPHIE
共催 京都市、京都市教育委員会
●お問い合わせ
KYOTOGRAPHIE 事務局
京都市上京区相国寺門前町670番地10
Tel. 075-708-7108
※また今回は「KYOTOPHONIE」も同時開催される。