新たなる魔法の絨毯 Rolls-Royce Spectre を都内で駆る
超高級電動スーパークーペで、首都高速道路と都内を90分ほど走った感想
2022年に発表され、徐々にオーナーの手に渡り始めた「Rolls-Royce(ロールス・ロイス)」Spectre(スペクター)。Spectreの意味は“亡霊”で、オバケの名前ばかりつけるロールス・ロイスの命名技は、電気自動車になっても健在だ。さて、このスペクター。今昔の巨大なV12とはどう違うのだろう? 大排気量のエンジンは積んでいないものの、2.9トンという超重量ボディ。それでいて、0-100km/h加速は4.5秒でこなすそう。今回、『Hypebeast』は、90分ほどであったものの、このスペクターを都内試乗する機会を得た。まさに、亡霊のように謎に満ちた、スペクターの走り&乗り心地に迫る。
魔法の絨毯が、より魔法の絨毯になった
走り心地の結論を最初に言うと、ロールス・ロイスが常に心がける“マジック・カーペット・ライド”が、新次元に達した感じだ。エンジンがないから、シフトチェンジもない。よりスムーズに加速するのは当たり前だった。スペクターには、大容量の102kWhのリチウムバッテリーが搭載されており、絶妙の指揮で前後のタイアにエネルギーが供給されている感じ。重いクルマを運転した時に感じる“よっこらしょ感”がいっさいない。マジでない。何度も言うようにエンジンがないから、オイルが流れず、駆動ベルトも回っていない。より“ひとつの固体になった感”がある。それでいて、18個のセンサーにより監視され、制御されるという「プラナー・サスペンション」によって、新たなる魔法の絨毯フィーリングを実現していた。
そして、車内はすこぶる静かである。走っているのに沈黙している。もともとロールス・ロイスは最高品質の静粛性を誇っていたが、エンジンノイズが完全に0なため、こちらもまた新次元のものに。“沈黙は金”の別の意味を知った。
緊張と緩和
静かな室内が功を奏して、快適さも最高である。ごくごく僅かなタイアのノイズしか存在しないこの空間は、同乗者とより深いトークをしたり、音楽を楽しんだり、長旅からのドライブで、夕日の美しさを満喫できたり……。シートも、非常に柔らかい豪華な革張り。超高額車両だけに緊張してしまいそうになるが、なんのその。ひとたび乗ってしまえば、ドライバーやパッセンジャーの緊張をほぐしてくれる要素がたくさんある。
結論! スペクターはドライバーズカーである
改めてスペクターのスタイルを伝えると、クーペのボディライン、2ドア構成、そして全体的に低めの着座位置。スペクターは、他のロールス・ロイスのモデルのように、運転手によって運転されながら後部座席に座るクルマではない(のかもしれない)。自身がハンドルを握って、アクセルペダルを踏んで、楽しむことを想定しているはず。正直、(助手席は最高のシートではあるものの)、後部座席はゴーストなどと比べて狭い。
2030年までに販売するすべての製品のEV化を正式に決定しているロールス・ロイス。そのロールス・ロイスにおいて、完全電気自動車の第1弾がドライバーズカーという事実は、新時代を象徴しているようだった。